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計画・設計

工場建設の用途地域はどこ?
倉庫が建てられる地域と工場立地法の緑地

最終更新:2026年8月31日

工場建設の用途地域はどこ? 倉庫が建てられる地域と工場立地法の緑地計画・設計工場建設の用途地域はどこ?倉庫が建てられる地域と工場立地法の緑地

工場をどの業種・規模でも建てられる用途地域は、13地域のうち工業地域と工業専用地域の2つです。危険性が大きい工場や著しく環境を悪化させるおそれのある工場を除けば、準工業地域でも建てられます。逆に、住居専用系の地域では工場はほぼ建てられず、倉庫も種類と面積によって可否が分かれます。土地の売買契約を結んでから「この土地には建てられない」と分かっても、契約は戻せません。

用途地域とは、都市計画法にもとづいて市街地の土地利用を定める13種類の地域区分のことです。どの用途地域でどんな建物を建てられるかは建築基準法第48条と別表第2で決まっており、工場・倉庫はこの制限を最も強く受ける建物です。さらに敷地9,000㎡以上または建築面積3,000㎡以上の工場には、工場立地法が敷地の20%以上の緑地を求めます(国の準則。市町村条例で緩和あり)。

この記事では、e-Gov法令検索で確認した条文と、東京都都市整備局が公開する建築基準法別表第2の概要、愛知県・県内各市の公表情報にもとづいて、工場・倉庫と用途地域の関係を発注者の目線で整理します(いずれも2026年8月31日確認)。

目次
  1. 用途地域とは市街地を13に分ける制度
  2. 工場建設に向く用途地域は3つに絞られる
  3. 倉庫建設の用途地域は倉庫の種類で変わる
  4. 工業専用地域と工業地域の違いに注意
  5. 市街化調整区域には用途地域の指定がない
  6. 愛知県の窓口は特定行政庁の6市とその他
  7. 工場立地法は敷地9,000㎡以上で届出が要る
  8. 工場立地法の緑地は市町村準則で緩和あり
  9. 土地の契約前に用途地域を確認する手順
  10. 工場・倉庫の用途地域に関するよくある質問

用途地域とは市街地を13に分ける制度

用途地域とは、都市計画法第9条にもとづいて定められる13種類の地域区分です。住居系が8地域(第一種・第二種低層住居専用、第一種・第二種中高層住居専用、第一種・第二種住居、準住居、田園住居)、商業系が2地域(近隣商業、商業)、工業系が3地域(準工業、工業、工業専用)あります。

それぞれの地域で建てられる建物・建てられない建物は、建築基準法第48条と別表第2で定められています。まず、工場・倉庫に関わる部分の全体像を示します。

用途地域とは市街地を13に分ける制度
用途地域工場倉庫業を営む倉庫自家用倉庫
第一種・第二種低層住居専用×××
第一種中高層住居専用×××
第二種中高層住居専用××△ 2階以下かつ1,500㎡以下
第一種住居△ 作業場50㎡以下のみ×△ 3,000㎡以下
第二種住居△ 作業場50㎡以下のみ×
準住居△ 作業場50㎡以下のみ
田園住居△ 農産物関連のみ×△ 農産物・生産資材の貯蔵のみ
近隣商業・商業△ 作業場150㎡以下のみ
準工業○ 危険性大・環境悪化著しいものを除く
工業
工業専用

※出典=東京都都市整備局「用途地域による建築物の用途制限の概要」(建築基準法別表第2の概要・2026年8月31日確認)。△の面積・階数・用途の条件は原文の区分にもとづきます。住居系の工場には原動機・作業内容の制限が別にあります。

なお、建築基準法第48条には「特定行政庁が許可した場合においては、この限りでない」というただし書きがあり、個別の許可で例外が認められることはあります。ただし許可は確実に得られるものではないため、土地選びは「許可なしで建てられる地域」を前提に進めるのが実務の基本です。

工場建設に向く用途地域は3つに絞られる

工場建設で候補になるのは、実質的に工業専用地域・工業地域・準工業地域の3つです。都市計画法第9条はそれぞれを次のように定義しています(2026年8月31日・e-Gov法令検索で確認)。

  • 工業専用地域——「工業の利便を増進するため定める地域」。住宅は建てられません
  • 工業地域——「主として工業の利便を増進するため定める地域」。住宅も建てられます
  • 準工業地域——「主として環境の悪化をもたらすおそれのない工業の利便を増進するため定める地域」

建築基準法別表第2は、工場を危険性や環境悪化のおそれの程度で4段階に分けています。自社の工場がどの段階に当たるかで、建てられる地域が変わります。

工場建設に向く用途地域は3つに絞られる
工場の区分建てられる用途地域
危険性や環境を悪化させるおそれが非常に少ない工場第一種住居・第二種住居・準住居(作業場50㎡以下)、近隣商業・商業(作業場150㎡以下)、準工業・工業・工業専用(制限なし)
危険性や環境を悪化させるおそれが少ない工場近隣商業・商業(作業場150㎡以下)、準工業・工業・工業専用
危険性や環境を悪化させるおそれがやや多い工場準工業・工業・工業専用
危険性が大きいか著しく環境を悪化させるおそれがある工場工業・工業専用のみ
危険物の貯蔵・処理の量が多い施設工業・工業専用のみ

※出典=東京都都市整備局「用途地域による建築物の用途制限の概要」(2026年8月31日確認)。どの区分に当たるかは原動機の出力や作業内容で判定されるため、計画段階で特定行政庁または建築士に確認してください。

ここで重要なのは、「どの区分に当たるか」を自社では断定できないことです。同じ金属加工でも、原動機の出力や使う設備によって区分が変わります。また、火薬・石油類・ガスなど危険物を扱う場合は、貯蔵・処理の量に応じた別の制限がかかります。候補地が準工業地域の場合はとくに、事業内容を伝えたうえで建てられるかどうかを特定行政庁に確認する必要があります。

倉庫建設の用途地域は倉庫の種類で変わる

倉庫建設では、まず自社の倉庫が「倉庫業を営む倉庫」か「自家用倉庫」かを区別する必要があります。他社の荷物を預かる営業倉庫は倉庫業法の登録対象で、建築基準法上も自家用より厳しい制限を受けます。

倉庫建設の用途地域は倉庫の種類で変わる
倉庫の種類建てられる用途地域面積・階数の制限
倉庫業を営む倉庫(営業倉庫)準住居・近隣商業・商業・準工業・工業・工業専用用途地域による面積制限なし
自家用倉庫第二種中高層住居専用から工業専用まで第二種中高層は2階以下かつ1,500㎡以下、第一種住居は3,000㎡以下。第二種住居以降は制限なし
農産物用の倉庫田園住居地域でも可農産物・農業の生産資材を貯蔵するものに限る

※出典=東京都都市整備局「用途地域による建築物の用途制限の概要」(2026年8月31日確認)。一団地の敷地内については別の制限があります。

自社製品や資材を保管する自家用倉庫であれば、第二種住居地域以降は面積制限なく建てられます。ただし、将来3PL(物流受託)など倉庫業に転用する可能性があるなら、最初から準住居地域以降の営業倉庫が建つ地域で計画するほうが安全です。用途変更は建物を建ててからでは動かせない条件だからです。

また、トラックの出入りが多い倉庫は、建築の可否とは別に、前面道路の幅員や交差点との距離が運用を左右します。可否の確認と同時に、大型車の動線が成立する土地かどうかも見ておく必要があります。

工業専用地域と工業地域の違いに注意

工業系の2地域はどちらも「どんな工場でも建てられる」点は同じですが、工場以外に建てられるものが違います。この違いが実務に影響する場面があります。

工業専用地域では住宅・寄宿舎・物品販売店舗・飲食店が建てられません。従業員向けの社員寮を敷地内に併設したい、敷地の一角にコンビニを誘致したいといった計画は、工業専用地域では成立しません。一方、事務所や診療所・保育所は建てられるため、事務所棟の併設や企業内保育は可能です。

工業地域なら住宅・店舗(10,000㎡以下)も建てられますが、学校・病院・ホテルは建てられません。逆に言えば、工業地域は将来マンションが隣に建つ可能性がある地域でもあります。操業音や夜間稼働への苦情リスクを抑えたいなら、住宅が建たない工業専用地域のほうが長期的には安定します。

準工業地域はほとんどの用途が混在できる地域で、住宅も商業施設も建ちます。周辺環境との調和が最も問われる地域のため、稼働時間や搬出入の頻度によっては、近隣対応を織り込んだ計画が必要になります。

市街化調整区域には用途地域の指定がない

候補地を探していると、価格の安い市街化調整区域の土地が目に入ることがあります。市街化調整区域は市街化を抑制する区域で、原則として用途地域は指定されず、建物を建てるには都市計画法にもとづく開発許可などの手続きが別に必要です。工場・倉庫を自由に建てられる土地ではありません。

また、都市計画区域内でも用途地域が指定されていない土地(いわゆる白地地域)では、市町村が特定用途制限地域を定めて建てられる建物を制限している場合があります。用途地域の色がついていないことは「何でも建てられる」ことを意味しません。

実務では、用途地域・区域区分・そのほかの地域地区をセットで確認する必要があります。用途地域は各市町村の都市計画担当課で確認でき、多くの市がWebの都市計画情報システムで公開しています。ただしWeb上の地図は参考情報という位置づけのことが多いため、契約前の最終確認は窓口で行ってください。

愛知県の窓口は特定行政庁の6市とその他

建築の可否や用途地域の解釈を確認する相手は「特定行政庁」です。特定行政庁とは、建築主事を置く市町村ではその市町村の長、それ以外では都道府県知事を指し、建築確認や第48条ただし書きの許可を所管します。

愛知県内では、名古屋市・豊橋市・岡崎市・一宮市・春日井市・豊田市の6市が特定行政庁です。また瀬戸市・半田市・豊川市・刈谷市・安城市・西尾市・江南市・小牧市・稲沢市・東海市・大府市の11市も建築主事を置いていますが、取り扱う建築物の範囲に限りがあり、規模の大きい工場・倉庫は愛知県の審査になる場合があります。それ以外の市町村は愛知県(建築指導課分室・各建設事務所)が窓口です(2026年8月31日・全国建築審査会協議会の特定行政庁一覧および愛知県「建築確認窓口」で確認)。

愛知県は工場立地の件数が多い県です。県の発表では2025年(1〜12月)の工場立地は件数55件・面積93.9ヘクタールで、件数は全国第2位でした。工業系の用途地域や工業団地の供給も市町村ごとに動いているため、土地探しの段階から市の企業立地担当課に相談すると、分譲中の工業用地や優遇制度の情報も同時に得られます。市の制度は工場建設の補助金と着工30日前の壁で整理しています。

工場立地法は敷地9,000㎡以上で届出が要る

用途地域の制限をクリアしても、一定規模以上の工場にはもう1つの法律がかかります。工場立地法です。対象になるのは「特定工場」で、要件と国の準則は次のとおりです。

工場立地法は敷地9,000㎡以上で届出が要る
項目内容
対象業種製造業(物品の加工修理業を含む)、電気供給業(水力・地熱・太陽光発電所を除く)、ガス供給業、熱供給業
対象規模(特定工場)敷地面積9,000㎡以上 または 建築面積の合計3,000㎡以上
生産施設面積率敷地の30〜65%以下(業種別に規定)
緑地面積率敷地の20%以上(国の準則)
環境施設面積率敷地の25%以上(緑地を含む。国の準則)
届出時期工事着工の90日前まで(短縮申請により30日前まで短縮できる場合あり)
届出先愛知県内は特定工場所在地の各市町村に一本化されている

※出典=豊川市「工場立地法」および愛知県「工場立地法について」(2026年8月31日確認)。

この規制が費用計画に効く理由は単純です。敷地の20%を緑地にするなら、その分だけ建物と駐車場に使える面積が減るからです。敷地9,000㎡ちょうどの土地なら1,800㎡が緑地、環境施設まで含めると2,250㎡が生産以外に充てられます。「敷地面積×建ぺい率」だけで建てられる規模を見積もると、特定工場ではこの分を見落とします。

倉庫はどうかというと、倉庫業など製造業等に当たらない事業の倉庫は工場立地法の対象外です。ただし製造業の工場敷地内に建てる倉庫は生産施設等の面積計算に関わるため、増築時には既存工場側の届出が必要になることがあります。

工場立地法の緑地は市町村準則で緩和あり

緑地20%以上という国の準則は、市町村が条例(地域準則)を定めることで、地域を限って緩和できます。愛知県内の例を挙げます。

工場立地法の緑地は市町村準則で緩和あり
区域緑地面積率環境施設面積率
一宮市工業地域・工業専用地域5%以上10%以上
準工業地域10%以上15%以上
その他の地域20%以上25%以上
豊川市工業専用地域および特定の地区10%15%
豊橋市公共造成工業用地(若松地区など)5%以上10%以上

※出典=一宮市(一宮市工場立地法地域準則条例・2017年10月1日施行)・豊川市・豊橋市の各公式サイト(2026年8月31日確認)。豊橋市は2023年4月1日から一部区域で基準がさらに緩和されています。区域の線引きは各市で異なるため、必ず立地する市町村に確認してください。

同じ愛知県内でも、立地する市と用途地域によって、必要な緑地が敷地の5%か20%かまで変わることが分かります。敷地9,000㎡ならその差は1,350㎡です。建てられる建物の規模、将来の増築余地、造成・外構の費用がこの差だけ動きます。

届出は愛知県内では各市町村に一本化されているため、窓口は立地する市町村の企業立地・産業振興の担当課です。着工90日前(短縮しても30日前)という期限は、補助金の「着工30日前まで」と同じく、建設会社の選定や設計と並行して進めないと間に合いません。

土地の契約前に用途地域を確認する手順

ここまでの内容を、実務の順序に落とすと次のようになります。

  1. 候補地の用途地域を市町村で確認する——都市計画担当課の窓口またはWebの都市計画情報。市街化調整区域・白地地域でないかも同時に見る
  2. 自社の建物が建てられる区分かを照合する——工場は危険性・環境悪化の区分と作業場面積、倉庫は営業用か自家用かで判定が変わる
  3. 工場立地法の対象規模かを判定する——敷地9,000㎡以上または建築面積3,000㎡以上なら、緑地を引いた残りで必要な建物が建つかを試算する
  4. 特定行政庁・建築士に確認する——用途の区分は最終的に特定行政庁の判断になる。計画概要を持って事前相談する
  5. 建設会社に土地の条件ごと相談する——用途地域・緑地率・造成条件を伝えたうえで概算を取る

この手順はすべて土地の契約前に行うものです。用途地域の確認は費用がかからない一方、間違えたときの損失は土地代そのものになります。

建築の可否が確認できたら、次は建築確認申請の手続きです。要否と流れは倉庫の建築確認申請の要否と2025年改正にまとめました。土地探しの段階から相談できる建設会社は愛知の工場・倉庫の建設会社比較で整理しています。掲載社には宅地建物取引業の免許を持ち、用途地域の確認を含む土地探しから対応する会社が複数あります。

出典:e-Gov法令検索|都市計画法(第9条 用途地域の定義)e-Gov法令検索|建築基準法(第48条・別表第2)東京都都市整備局|用途地域による建築物の用途制限の概要愛知県|工場立地法について一宮市|工場立地法の規定による届出について豊川市|工場立地法愛知県|建築確認窓口(2026年8月31日確認)

工場・倉庫の用途地域に関するよくある質問

工業地域と工業専用地域の違いは何ですか?

どちらもすべての区分の工場を建てられますが、工業専用地域は住宅・物品販売店舗・飲食店が建てられない工場のための地域で、工業地域は住宅や店舗(10,000㎡以下)も建てられます(建築基準法別表第2・2026年8月31日確認)。住宅が建たない工業専用地域のほうが、操業に伴う近隣トラブルのリスクは小さくなります。

準工業地域に工場を建てられますか?

危険性が大きい工場や著しく環境を悪化させるおそれのある工場、危険物の貯蔵・処理量が多い施設を除いて建てられます。作業場の床面積制限もありません。ただしどの区分に当たるかは原動機や作業内容で判定されるため、計画段階で特定行政庁または建築士に確認してください。

住居系の用途地域に倉庫を建てられますか?

自家用倉庫であれば、第二種中高層住居専用地域(2階以下かつ1,500㎡以下)、第一種住居地域(3,000㎡以下)、第二種住居地域・準住居地域(制限なし)で建てられます。倉庫業を営む営業倉庫は住居系では準住居地域のみです。低層・中高層の住居専用地域(第一種中高層まで)には原則として建てられません。

工場立地法の緑地はどのくらい必要ですか?

国の準則では敷地面積の20%以上の緑地と、緑地を含む25%以上の環境施設が必要です。対象は敷地9,000㎡以上または建築面積3,000㎡以上の特定工場です。市町村の条例で緩和されている場合があり、一宮市は工業地域・工業専用地域で緑地5%以上まで緩和しています(2026年8月31日確認)。立地する市町村の担当課に確認してください。

この記事を書いた人

執筆・編集:愛知システム建築ナビ 編集部

愛知県で工場・倉庫をシステム建築で建てるための実務情報と、県内で対応する建設会社の情報をまとめています。工法や坪単価の目安は各社・各メーカーの公表資料、会社の情報は各社の公表情報をもとに、確認した日付とあわせて記載しています。

最終更新:2026年9月2日